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税務分野の新行政サービス

<3月号> 

税務分野の新行政サービス


税理士法人J-s.山内会計
代表社員 山内靖雄

ICTの活用が、日々進展しており、私たちの生活にも変化をもたらし続けています。

e-Taxやマイナンバーなど、近年、税務の分野でも様々な変化がありました。こうした変化はめざましく、日々、新たな行政サービスが生まれています。

今回は、最近になって開始された税務分野の行政サービスについて紹介したいと思います。



今月のテーマ

【税務分野の新たな行政サービスについて】

法人設立ワンストップサービスがスタート

以前より新聞などで報じられていた「法人設立ワンストップサービス」が、ついに令和2年1月20日からスタートしました。

法人の設立にあたっては、これまで、非常に煩雑な手続きが必要になっていました。法人設立届等は税務署・都道府県・市町村へ、社会保険の新規適用届は日本年金機構の事務センターへ、労災保険の保険関係成立届は労働基準監督署へ、雇用保険の適用事業所設置届はハローワークへと、それぞれに手続きする必要がありました。また、税務署に対しては、給与支払事務所の開設届や、減価償却資産の償却方法の届出など、様々な手続きを行う必要がありました。

今後は、マイナポータルを使い、この法人設立ワンストップサービスを利用することで、これらの手続きが一度に行えるようになります。提出先の役所をまたいで、一括して手続きができるようになるので、利便性は非常に高まることになると感じます。

具体的には、次の書類の作成・提出が一度の手続きで完結します。

<国税に関するもの>
  • 法人設立届出
  • 給与支払事務所等の開設等届出
  • 消費税の新設法人に該当する旨の届出
  • 青色申告の承認申請
  • 棚卸資産の評価方法の届出
  • 減価償却資産の償却方法の届出
  • 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出
  • 申告期限の延長の特例の申請
  • 消費税課税事業者選択届出
  • 消費税簡易課税制度選択届出
  • 消費税課税期間特例選択・変更届出
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
  • 電子申告・納税等開始(変更等)届出
  • 消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出
  • 事前確定届出給与に関する届出
<地方税に関するもの>
  • 法人設立・設置届(都道府県)
  • 法人設立・設置届(市町村)
  • 申告書の提出期限の延長の承認申請
  • 事業所等新設・廃止申告
<健保・厚生年金に関するもの>
  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
<労災・雇用保険に関するもの>
  • 保険関係成立届
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

令和元年度中を目処に、法人設立登記自体も、この法人設立ワンストップサービスから行えるようになる見込みです。

尚、事業主本人が利用することが前提とのことで、税理士が代理で申請をする場合は、従来通り、e-Tax、eLtax、e-Govからの申請となります。

ワンストップサービスは他にも続々

マイナポータルを活用したワンストップサービスは、他にも続々と検討されています。ここでは、それらのうち特に税制に関連の強いものとして以下の二つをご紹介いたします。

従業員の社会保険・税手続のワンストップサービス

従業員さんの採用、昇給、結婚、出産、退職などのライフイベントや、毎年の年末調整、社会保険の定時決定などにあたって、企業は様々な申請・届出をする必要があります。これまで、国税関連の手続は税務署へ、地方税は各市区町村へ、社会保険は日本年金機構へ、雇用保険はハローワークへ、それぞれ別々に手続きする必要がありました。

今後は、オンライン手続により、こうした手続がワンストップで行えるようになる見込みです。

対象手続には、源泉徴収票等の法定調書や給与支払報告書の提出、社会保険・雇用保険の資格取得・資格喪失手続などのメジャーな取引から、育休・産休関連の手続きや、開廃業に伴う手続きなど、様々なものが含まれています。具体的には「オンライン・ワンストップ化の対象手続案一覧」という資料がありますので、気になる方はチェックしてみてください。

従業員の社会保険・税手続のワンストップサービスは令和2年11月頃から順次開始できるよう取組を推進することとされています。また、令和2年度中を目処に、同じ情報を複数回入力する必要が無いよう「新しい提出方法」による手続を開始することとされています。

詳しくは、「企業が行う従業員の社会保険・税手続のオンライン・ワンストップ化等の推進に係る課題の最終整理」という資料がありますので、気になる方はチェックしてみてください。

死亡・相続ワンストップサービス

死亡や相続に伴って必要となる手続きがワンストップで行えるようにすることを目指して、検討が進められています。

具体的には、まず、生前に故人の情報をデジタル化しておきます。そして、故人の死亡時には、死亡届を自治体に届出すれば、各行政機関や民間事業者の間で情報が共有され、住民票や戸籍上の手続から、年金の手続や税務上の届出、故人の有していた各種資格に関する届出、各金融機関や生命保険各社への連絡までの手続がバックヤードで完結。さらに、その後の相続では、事前にデジタル化しておいた情報をもとに遺産分割協議が速やかに始められ、その後の相続税申告、不動産登記の変更、株式の名義変更や預金の払い戻しまでの手続をワンストップで行えるようにする方向で検討されています。

死亡・相続ワンストップサービスの開始時期については、令和7年度を目指すこととされています。

詳しくは、「死亡・相続ワンストップサービス実現に向けた方策のとりまとめ」という資料がありますので、気になる方はチェックしてみてください。

保険会社からの控除証明も電子化

先ほどの「従業員の社会保険・税手続のワンストップサービス」に関連して、年末調整の手続きも大幅に電子化が可能になります。

これまで、年末調整の際には、各保険会社から送られてくる控除証明のハガキを勤務先へ提出していたかと思います。今後、対応している保険会社からの控除証明は電子データで受け取り、勤務先へも電子データで提出することが可能になります。この際、各保険会社からの控除証明データは、自分のマイナポータルに自動的に集まってくるため、各保険会社のウェブサイトにアクセスして回る必要はありません。

また、勤務先では、従業員さんから送られてきた控除証明のデータをソフトに取り込むことで、保険の種類や保険料額が自動で入力されるため、これまでのような入力・確認の手間が大幅に削減されます。

ただし、こうした年末調整手続の電子化に取り組むには、
  1. まず、ご契約の保険会社が、このシステムに対応することが必要なほか、
  2. 勤務先が給与計算ソフトを改修するとともに、
  3. 勤務先から従業員さんにIDやパスワードを割り振るなどの体制を整え、
  4. その上で、勤務先の会社が税務署から事前に承認を受ける必要があります。
  5. さらに、各従業員さんが役所でマイナンバーカードを取得するとともに、
  6. マイナンバーカードを読み取るための機器を購入し、
  7. さらに、各従業員さんから各保険会社へ「民間送達ID」と呼ばれるものを連絡して手続を取る
という必要があります。準備には時間がかかるので、注意が必要です。

年末調整手続の電子化については令和2年分から可能になります。詳しくは、国税庁から「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ」という資料が公表されていますので、気になる方はチェックしてみてください。

住宅借入金特別控除証明の電子交付

保険の控除証明のほか、住宅借入金特別控除の控除証明も電子交付を受けることが可能になります。

住宅借入金特別控除とは、住宅ローンの残高に応じて、所得税の控除を受けられる制度です。年末調整で控除を受けるために、住宅借入金特別控除の申告書や住宅ローンの残高証明書を会社へ提出される方も多いかと思います。

住宅借入金特別控除申告書は、住宅借入金特別控除を初めて受けたときに、以後10年分が書面で郵送されてきていて、それを毎年1枚ずつ使っていたかと思います。

しかし、書類を10年間も保管しなければならないため、紛失しないよう気を遣わなければならず、煩わしさを感じていた方も多かったのではないでしょうか。

平成31年1月以降に居住を開始された方から、住宅借入金特別控除証明書の電子交付が選択できるようになりました。

電子交付を選択すると、e-Taxの利用者識別番号・暗証番号を覚えておけば、住宅借入金特別控除証明書についてはネットから取り出すことができるようになるため、書面を10年間も管理していく必要が無くなります。「情報を紙で管理するよりもデータで管理する方が楽」と感じられる方にとっては、とても良いことかと思います。

電子交付を選択するには、
  1. 住宅借入金特別控除の適用を初めて受ける際の所得税確定申告をe-Taxで行うこと、
  2. その際に、電子交付を希望するか入力する欄があるので、[希望する]を選択すること
の2点が必要になります。

求人申込や経営力向上計画なども電子化

ワンストップ型のもの以外にも、電子申請は様々な場面で増え続けています。

税務に関係するものですと、経営力向上計画の申請・変更申請が、電子申請で行えるようになることが予定されています。

経営力向上計画は、即時償却をする際に必要な書類です。通常、機械などの設備を取得したときは、全額はその年の経費にできず、設備を使用する期間(法定耐用年数)に亘って順番に減価償却することになります。ところが、中小企業が経営力向上計画の認定を受け、その計画に基づいて設備を取得するなど、一定の要件を満たしたときは、その設備は取得時に全額を経費にすることができます。

この経営力向上計画は、事前に認定を受ける必要があるのですが、この申請が、令和2年度中に電子申請に対応する予定となっています。

また、税務に直接関係ありませんが、多くの方に関係しそうなものとして、ハローワークの求人申込や、パスポートの発給申請、会社の実印の申請なども、電子申請に対応します。ハローワークの求人申込は令和2年1月から既に開始されているほか、パスポートの発給申請は令和4年度中の開始予定、会社の実印の申請については開始時期未定となっています。

このほかにも、各業種における許認可申請や在留資格の申請など、様々な申請・届出が次々と電子化される予定です。詳しくは、「デジタル・ガバメント実行計画(閣議決定、令和元年12月20日)」の別紙1(102~201ページ)に一覧が載っていますので、気になる方はチェックしてみてください。

連携進むGビズID

GビズIDとは、様々な行政サービスが1つのIDで利用可能になる、いわば政府統合の認証基盤です。各省庁の電子申請システムへ、Open ID ConnectによるSSOサービスを提供しています。「法人共通認証基盤」とも呼ばれています。

GビズIDは、これまで、農林水産省のオンライン申請や経済産業省の保安検査手続等で利用されていましたが、税務分野、社会保険分野とは縁遠い存在でした。

令和2年4月から、GビズIDとマイナポータルが連携、さらに令和2年9月から、e-Govが、GビズIDに対応します。

マイナポータルは、マイナンバーを活用したポータルサイトで、上でご紹介したワンストップサービスもマイナポータルを活用したものです。また、e-Govは、厚生労働省や金融庁、経済産業省など、様々な省庁への電子申請が行えるオンライン窓口です。社会保険・労働保険の電子申請もe-Govで行うことができます。

今回、マイナポータルやe-GovがGビズIDに対応することで、社会保険・労働保険関連の電子申請や公文書管理にGビズIDが使われることとなります。

また、GビズIDを使えば、電子証明書が無くても、社会保険・労働保険の電子申請が一部可能になる予定です。具体的には、ID・パスワードを入力し、認証手続をする方式で、次の手続が行えるようになります。

<健康保険・年金に関するもの>
  • 資格取得届
  • 資格喪失届
  • 算定基礎届
  • 月額変更届
  • 賞与支払届
  • 被扶養者(異動)届
  • 第3号被保険者関係届
<雇用保険に関するもの>
  • 資格取得届
  • 資格喪失届
  • 転勤届
  • 個人番号登録届

これまで、税務や社会保険手続からは縁遠い存在だったGビズIDが、急に身近な存在になりそうです。まだまだ税務分野でどのように利用さるのか(または利用されないのか)、見えてこない部分が多いですが、今後の動向には注目していきたいところです。

最後に

これまでも税理士法人山内会計では、全件e-Taxによる申告、社会保険の電子申請への対応など、社会の変化に速やかに対応して参りました。今後も立ち止まること無く、新たな行政サービスへの対応を続々と進めて参ります。


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